研究開発について
当社グループの研究開発活動は、鶴見研究所(神奈川県横浜市)、浜松研究所(静岡県浜松市)の2研究所と各事業部門の技術開発部からなる体制で推進しています。
研究開発の実施にあたっては、各事業部門の技術開発部はお客さまに密着した製品・工法の開発を担い、研究開発本部は基礎的な研究と将来技術の開発を担っています。同時に、開発課題に応じて事業本部と研究開発本部が柔軟に連携し、製造課題に関しては、技術本部、工場、製造子会社と円滑な連携を図っています。当社の研究開発本部には、基礎研究と将来技術の開発を推進する研究開発部門、熱測定・耐火技術・CAEの専門部門、化学分析の専門部門を設置しており、「断つ・保つ」の技術に関する研究開発を支えています。
鶴見研究所
浜松研究所
注力している取り組み
「断つ・保つ」の技術開発について、代表的な取り組みをいくつか紹介します。
1. 再生可能エネルギー転換への貢献
再生可能エネルギーの生産適地に限界がある日本では、再生可能エネルギーを何らかのエネルギーキャリアに変えて、貯蔵・輸送することが求められます。海外からのエネルギー輸入に適したキャリアには、液化水素やアンモニアなどがあります。液化水素は体積効率などに優れたエネルギーキャリアですが、液化には-253℃の極低温が必要です。ここに当社グループの貢献すべき領域があると考え、断熱材およびその評価・設計技術の構築に取り組んでいます。これまで高温用断熱材の領域では、開発のみならず、熱物性測定のISO制定など基礎技術の点でも、当社グループは社会に貢献してきました。極低温の領域においても、頼られる「保つ」技術を極めていきます。2. 情報通信・半導体産業への貢献
情報通信機器の高速化はとどまるところを知りません。ふっ素樹脂は、その伝送損失の低さから、次世代の5G/6G用の基板材料の有望材料です。しかし、ふっ素樹脂は熱膨張率が高く、接着性も悪く、銅箔など回路材料と複合化しづらいという弱点もあります。熱膨張および接着性の問題を克服する技術方策に目途をつけ、研究開発を加速させております。半導体産業では半導体素子の微細化や3D化などの技術に応じて、製造装置部品への要求も高くなっております。当社グループでは、従来より、耐熱性や耐食性に優れるふっ素系ゴムの開発に取り組み、架橋技術を磨いてきました。さらなる高性能を実現するゴム架橋技術に継続的に取り組んでおります。
3. カーボンニュートラルへの貢献
断熱技術は熱利用機器の省エネルギーで、カーボンニュートラルに直接応える技術です。①断熱・保冷材の性能や使いやすさを向上する技術開発に加え、②断熱や保冷の必要性を見える化する熱診断技術の開発などにも取り組んでいます。今後の課題や展望
材料技術の高度化を進めていく手段として、2024年4月より、東北大学に設置された高輝度放射光設備ナノテラスの利用を開始いたしました。ナノテラスは、国が日本の研究力強化と生産性向上を意図して創設した、世界最先端の材料解析のためのX線施設です。ナノテラスの能力に加え、産学連携で成果を生み出す有志連合“コアリション”のしくみに賛同し、当社グループは2024年3月に参画いたしました。当社グループは、これまでも材料分析にX線を利用する装置を含めさまざまな評価設備を使ってきましたが、ここにナノテラスが強力なツールとして加わります。当社の材料開発や新製品開発をより一層加速していきます。
研究開発のDXによる進化も重要課題です。情報管理・共有ツールを活用し研究開発情報を集約し、効率化する取り組みを進めています。近年進展の著しいMI(Materials Informatics※)にも注目し、活用検討を進めています。優れた情報解析ツールやAI技術があっても、それを役立てられるかどうかは、人の力です。研究所では情報技術を活用できる人材はもちろん、「断つ・保つ」の技術を活用できる人材の育成をきちんと進めていきます。当社グループを支える技術人材の供給を継続し、世の中に役立つ製品やサービスの提供につなげていきます。
※ 材料開発にデジタル技術を活用すること。